九枚落ち 銀の守りに隙あり

攻め駒との交換によって守りの金を突破する場合は、渡した攻め駒は上手の持ち駒となる事に留意する必要がある。
つまり渡した駒を新たな守り駒として使われる可能性があるということだ。

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渡す駒が桂、香ならば、守り駒として使われたところで大した問題はない。
守り駒としての性能が低いからだ。
1図のように利きの無い方向から狙えば、簡単に崩せる。

問題は銀を渡した場合だ。
銀は、一般的には金よりもやや弱い駒として扱われるものの、初心者目線では金とほぼ同等に厄介な駒であるはずだ。

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2図は前回の記事の10図から△2三同金▲同飛成△4二銀と進んだ局面。
桂、香と比べれば、十分に守り駒として機能している。
金と銀を交換できたとしても、その銀を相手に苦戦するのでは交換した意味がない。
なんとか銀の守りを攻略したいのだが、突破口はないものだろうか。

実は銀の守りには、ひとつ明確な弱点が存在する。
それは『利きを維持しながら動くことができない』ということである。
3図と4図を比べてみてほしい。

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3図は上手方5五銀の利きを示した図。
4図は5五銀が1手どこかへ動いた時、新たに生じる利きを示した図。
3図と4図では、色のついたマス目の位置がひとつも一致していない。
つまり銀が1手動くと、動く前に銀の利きが存在していたマス目から、利きが全て外れてしまうことがわかる。
銀は『利きを維持しながら動くことができない』のである。

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金にはこのような弱点は無い。
5図と6図を比べると、4五、4六、5六、6五、6六の5マスはどちらも色つきマスとなっている。
つまり『利きを維持したまま動く』金の動かし方が少なくとも1通りは存在しているということである。
利きを維持することだけが守り駒の役割というわけではないものの、この性質は銀を守り駒として使うにあたっては無視できないレベルの欠点であり、金と銀の守り駒としての性能差の一因と言える。

銀は『利きを維持しながら動くことができない』。
この性質を知っていれば、上手に持ち駒の銀を打たれたとしても、必要以上に怖がることなく落ち着いて対処できるだろう。
金銀交換も恐れずに挑めるようになるはずだ。
まずは金の守りを突破することに注力したい。