十枚落ち 再考

十枚落ちの棋譜を複数見ていくうちに、いろいろと新たな発見があった。
文章化し、まとめておく。

 

下手負けに直結する要注意事項
・駒損してはいけない
・と金を作らせてはいけない

一口に悪手と言っても、負けに直結する大悪手から、後続の指し方次第でリカバリ可能な緩手まで、様々な度合いの悪手が存在する。
今回改めて認識したのは、十枚落ちにおいては上記2項目が特に罪の重い悪手要素であるということだ。
どちらかを発生させた時点で、その将棋は9割方下手負けである。

下手が勝利を目指して進むための考え方を、筆者は『5つの方針』という形で示した。
それと同じように、上手の考え方も『方針』という形で示すことができる。
初心者にもわかるようにと項目数を絞っている『5つの方針』と比べて、上手のそれはより複雑なものと推測できるが、そのうちの1つに、

『戦力を確保する』

という項目が含まれていることは確実だ。
下手の駒損は、上手から見れば駒得=戦力を確保したということ。
すなわち勝利条件を1つクリアしたということである。
ゆえに駒損は下手負けに直結する。
と金作りも、下手が駒損するわけではないが上手が戦力を得るという面では同じである。

そもそも駒落ちというルールがハンディキャップとして機能するのは、

「鎧・刀・大砲フル装備の下手」vs「丸腰の上手」

という構図だからだ。
それなのに上手にみすみす武器を与えてしまえばどうなるか。
結果は火を見るより明らかだろう。
ハンデがリセットされた互角の戦いでは、素の技量に劣る下手に勝ち目はないのである。

 

『5つの方針』のうち特に重要な2項目
(1)『攻め駒を玉に近づける』
(2)『2対1で攻める』

『5つの方針』には重要な項目とあまり重要でない項目がある。
勝つための方針として示した(1)(2)(3)のうち、(3)は特別に意識せずとも、(1)(2)を満たす手を指し続けるうちに自然と達成されることも多い。
しかし(1)(2)に関しては、常に意識し続けなければ達成できない。
ゆえに(1)(2)は(3)よりも重要度が高い。

また負けないための方針(4)(5)に関しては、上手の攻めが下手陣に到達する前に上手玉を寄せ切るという勝ち方が理想である以上、重要度は低くて当然だ。
というかそもそもの話として筆者は、十枚落ちで受けの技術を指導するのは不可能だと考えているので、いっそのこと(4)(5)は省いてしまうべきかもしれない。

筆者はまだ『5つの方針』が完成形だとは思っていない。
まだまだ改良が必要だ。