九枚落ち 守り駒より安い駒で攻める

前回は、守りの金を無力化する方法として3つの手段が存在することを述べた。

  • タダ取り
  • 分断
  • 交換

今回は交換について詳しく見ていく。

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3三の利きの数は、下手が飛・角、上手が金のみで『2対1』になっている。
十枚落ちの方針によると『2対1で攻め』れば成功しそうに思えるが、はたして。

1図で▲3三角成(2図)とすれば、以下△同金▲同飛成△5五角(3図)と進む。

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龍は作ったものの、渡した角で両取りをかけられてしまった。
これでは到底、攻めが成功したとは言えない。

何がまずかったのか。
それは「守り駒が玉ではない」という要素を考慮しなかったことだ。

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4図は十枚落ちの途中図。
ここでもし上手が△3三同玉と馬を取ると、その瞬間▲同飛成と玉を取って下手の勝ちとなる。
玉は「取られると負け」という、他の駒にはない特別な性質を有している。
それゆえ十枚落ちでは、玉に対して『2対1で攻める』を正しく実行できていれば、攻め駒を取られる心配はなかった。

ところが九枚落ちでは事情が変わってくる。
守り駒が金の場合、攻め駒と「刺し違える」という手段が生じるのだ。
2図から△3三同金▲同飛成と進んだやり取りがそれである。
このやり取りで、下手は角金交換の駒損となった。

金の守りを突破するには、金に刺し違えられても被害の少ない駒、すなわち『金より安い駒』で攻める必要がある。
具体的には銀、桂、香、歩の4種いずれかの駒で攻めればよい。
今回は銀、桂、香の3種について、それぞれ例を見ていこう。
歩を使う攻めに関しては、また別の機会に。

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香で攻める場合は、必然的に端を狙うことになる。
七香、1八飛の構えは『雀刺し』と呼ばれる攻め方。

5図から▲1四歩△同歩▲同香△1三歩▲同香成と進んで6図。

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以下△1三同金なら▲同飛成で下手大成功。
△3三金なら▲2二成香~▲1三飛成とし、次に▲2三成香を狙えばよい。

上手としては5図からの手順中△1三歩を打たずに△3三金とかわすほうがまさる。
その場合も下手は▲1二香成~▲1三飛成~▲2二成香~▲2三成香を狙えばよい。

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桂はその特性上、狙えるマス目が1三、3三、5三、7三、9三の5マスのみに限られている。
小回りが利かないので、上手の駒組みに合わせて狙い所を変えるといった手段が取りにくく、使いこなすのは難しい。
一応7図のように、桂の攻めがピタリとはまる筋も存在はするが、上手の駒組みが少し変化するだけで成立しなくなる、か細い攻め筋である。
個人的にはあまりおすすめしない。

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最後に、銀を使う攻め方を見ていこう。
代表的なのは、飛の縦利きに沿ってまっすぐ銀を繰り出していく方法だ。
棒銀』と呼ばれる、将棋の王道とも言える攻め方である。

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そのまま▲2四銀と進んでは△同歩と取られてしまうので、▲2四歩(9図)と『合わせの歩』を使う。
8図では、2四のマス目を上手の歩が守っていると見なすことができる。
銀では守りの歩と刺し違えられて駒損してしまうが、歩なら刺し違えられても問題ないというわけだ。
以下△2四同歩▲同銀△2三歩▲同銀成で10図。

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10図以下△2三同金▲同飛成、もしくは△4三金▲3二成銀~▲2三飛成で突破成功。
6図と同じ要領である。
上手としては、手順中△2三歩と打たずに△4三金とかわす方がまさるのも同様。

棒銀は1筋から9筋までどこでも使える攻め方なので、上手の陣形が多少異なっても応用が利く。
ぜひ身につけてほしい。