十枚落ち 攻めの効率を意識する
多くの初心者を教えるうちに『方針』の教え方が定まってきた。
最近は次のような形で説明している。
3つの方針
- 『龍と馬を作る』
- 『攻め駒を玉に近づける』
- 『2対1で攻める』
やや高度な方針
- 『玉を端に追い詰める』
- 『駒損しない』
- 『と金を作らせない』
3つの方針は必ず教える。
やや高度な方針に関しては、下手の技量を観察したうえで、理解してもらえそうなものだけを話すことにしている。
さて。
今回は十枚落ちの実戦を検討したい。
下手は前回の九枚落ちと同じ子供。
順序としてはこの十枚落ち局のほうが先で、これの後に前回の九枚落ち局を行なった。
手合割:十枚落ち
△4二玉 ▲9六歩 △8四歩 ▲9七角 △7四歩 ▲2六歩
△4四歩 ▲2五歩 △4三玉 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛(1図)
△9四歩 ▲2一飛成 △3四歩 ▲4一龍 △5四玉 ▲5一龍
△3五歩 ▲5三角成(2図)
△4五玉 ▲5二龍(3図)
△8五歩 ▲5四馬
△3四玉 ▲5三龍(4図)
△1四歩 ▲4三龍(5図)
△2四玉 ▲4四龍(6図)
△2三玉 ▲4三馬 △7五歩 ▲3三龍 △1二玉(7図)
▲3四馬
△2一玉 ▲4三馬 △1二玉 ▲3二龍(8図)
△1三玉 ▲3三馬
△6四歩 ▲2三龍
まで44手で下手の勝ち
△3二玉と引けば飛成は受かるが、代わりに▲5三角成が生じる。
上手は飛成を甘受した。
5三を『2対1で攻める』。
同時に『龍と馬を作る』も達成。
さて、ここからの手順で、龍がものすごく効率の悪い動きをし始める。
3図の▲5二龍は完全な1手パス。
4五玉に対して『近づける』なら、目標となるマスは4四か5四だ。
4四を狙うなら▲4二龍とすべきだし、5四はすでに『2対1』なのだから今すぐ▲5四馬とできる。
5二龍が5三→4三→4四と動いた。
代えて▲5三龍~▲4四龍または▲4三龍~▲4四龍とすれば1手速い。
さらに言えば6図の▲4四龍では、代えて▲4四馬とするほうが効率が良い。
7図~8図で一度千日手模様になっており、8図の▲3二龍も不要な手だ。
3三龍はすでに十分玉の近くにいるので、玉から遠いほうの4三馬を『近づける』べき。
つまり▲3二馬~▲2二馬とするのが最短の攻めである。
十枚落ちや九枚落ちなら、今回・前回で触れたような効率の悪い攻め方でも、なんとかなるかもしれない。
しかしこの先、八枚落ち→七枚落ちとステップアップしていくにつれて、効率の悪さが足枷となり、逆転負けしてしまう将棋が増えてくるだろう。
効率良く攻める技術は一朝一夕で身につくものではないので、今のうちから、攻めの効率について意識しておきたい。