九枚落ち 上達過程その6
前回、九枚落ちでの初勝利を収めたM・H君。
しかし勝つまでの道のりには、危なっかしいところも少なくなかった。
もう一度九枚落ちを行ない、確実に勝つだけの力があるかどうか見極めよう。
9戦目の棋譜はこちら。
終了日時:2018/02/18 14:22:56
手合割:その他
上手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・v玉v金 ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
下手の持駒:なし
上手番△3二金 ▲7六歩 △6二玉 ▲6六角 △5四歩 ▲9三角成
△4四歩 ▲8三馬 △4三金 ▲7八飛 △5三金 ▲7五歩
△6四金 ▲9六歩 △5五歩 ▲3八金 △1四歩 ▲4八銀(1図)
△3四歩 ▲9七桂 △4五歩 ▲8五桂(2図)
△1五歩 ▲7四歩
△同 歩 ▲7三桂成(3図)
△5三玉 ▲7二馬 △7五歩 ▲6三成桂(4図)
△同 金 ▲7五飛 △6四玉 ▲9五飛 △2四歩 ▲9四飛
△7四金 ▲8二馬 △7五玉 ▲8三馬 △7三歩 ▲9三馬
△6五玉 ▲9五飛 △6四玉 ▲7八金 △5四玉 ▲7五歩(5図)
△6四金 ▲8三馬 △2五歩 ▲9四飛 △6三玉 ▲9三飛成
△7五金 ▲7三馬 △5四玉 ▲8四龍 △7四歩 ▲7六歩
△9二桂(6図)
▲7二馬 △6五玉 ▲9四龍 △7六玉 ▲5四馬
△6五歩 ▲6八銀(7図)
△8五金 ▲7七銀 △7五玉 ▲5三馬
まで72手で下手の勝ち
前局で飛車を7筋から成り込んだ構想に手応えを感じたか、本局では最初から7筋に飛車を振った。
△5四歩~△5五歩とあからさまに中央を狙ってくる動きに対しても、▲3八金~▲4八銀で対策ばっちり。
『3枚目の攻め駒』として桂を活用。
7三のマス目で『2対1』を作って突破しにいく。
上手にこれを防ぐ手段はない。
M・H君は間違いなく読み切って指している。
桂を成り込む前の▲7四歩の突き捨ては好手。
次に▲7四成桂△同金の時に▲同飛(A図)と飛車のほうで取り返せるようになるので、攻めがより速くなる。
……と感心していたのだが。
もちろんこの攻めは『2対2』なので△同金で失敗。
せっかく作った成桂を一瞬で失ってしまった。
M・H君は前回も似たような失敗をしていた。
何だろう。
初心者にとって、駒を「引く」手というものはそれだけ思い付きづらい手なのだろうか。
きっとそうなのだろう。
ひとたび上達してしまうと、こういう初心者の感覚というものが実感できなくなる。
純粋なゲームのルールとしては、駒が横に動こうが下に動こうが等価のはずだが、人間の認識では「前進」「横移動」よりも「後退」のほうが浮かびにくいものなのかもしれない。
しかしM・H君はここから力を発揮してきた。
細かい動きで、少しずつ上手から見て受けづらい形へと追い込んでいく。
▲7五歩は金と歩の連結を崩す好手。
▲7六歩で攻めが決まっている。
△6五金なら▲7四龍△6四桂▲6三馬とし、次の▲6五龍で金が取れる。
△9二桂は上手としても苦し紛れの凌ぎだ。
最後は上手玉を完全に包囲して勝ち。
ちなみに実際の対局では▲6八銀でなく▲7七歩と打ったのだが、これは「打ち歩詰め」。
禁じ手(反則)であることを教えて、やり直してもらった。
全体的に前局から安定感を増した印象を受ける。
4図の失着だけは気になるが、流石に今回で覚えて、3度目の同じ間違いをすることはないだろう。
次回は八枚落ちに挑戦してもらうことにした。